キャンセルポリシーの書き方。角を立てずに前提を揃える文例3本
キャンセルポリシーを作ろうとして、途中で手が止まる。よくあることです。厳しく書けば感じが悪いし、ゆるく書けば意味がない。その間で迷って、結局作らないまま何年も経ちます。
迷う理由は、「取り立てるための文章」だと思っているからです。実際の役割は違います。キャンセルポリシーがするのは、予約を「予定」から「約束」に変えることです。人は、条件を了承した相手との約束は破りにくい。それだけの話です。
この記事には、角が立たない書き方の順番、置き場所別の文例3本、そして実際にキャンセル料を請求する段階で何を確認すべきかまで載せました。
キャンセル料を取るつもりはないんです。でも当日に飛ばれるのはつらくて…
請求しない前提でも、ポリシーは効きます。書いてあるだけで「連絡しないと申し訳ない」に変わるからです。今日は取り立てない前提の文面を作ります
01角が立つ文には、共通点があります
読んで嫌な感じがするポリシー文を並べると、ほぼ全部が同じ形をしています。罰則から書き始めているのです。
当日キャンセルの場合、施術料金の100%を申し受けます。無断キャンセルは次回のご予約をお断りする場合がございます。
間違ったことは書いていません。ただ、これを予約前に読んだ人がどう感じるかです。まだ何もしていないのに疑われている、という読後感が残ります。
順番を変えるだけで、同じ内容が別物になります。
1. 予定は変わるものだと認める — 「ご予定は変わるものだと思っています」
2. だから早めに教えてほしい、と頼む — 「分かった時点でお知らせいただけると助かります」
3. 期限と方法を具体的に書く — 「前日18時まで、このトークから変更できます」
4. 期限を過ぎた場合を淡々と書く — 「それ以降は枠を空けられないため、◯◯とさせていただいています」
①があるかないかで、読後感がまったく変わります。①を飛ばして③④だけ書くと、規約になります。①を入れると、お願いになります。書いてある内容は同じです。
そしてもう1つ。主語を「お客様」ではなく「お店」にすると、とげが減ります。「お客様は前日までにご連絡ください」と書くと責める形になりますが、「前日18時までにご連絡いただけると、枠を他の方にご案内できます」なら、お願いの形で収まります。
02文例3本(置く場所ごとに長さが違います)
1. 予約ページ・ホームページに載せる版(標準)
ご予約の変更・キャンセルについて
>
ご予定は変わるものだと思っています。難しくなったときは、分かった時点でお知らせいただけると助かります。
>
・前日18時まで:ご連絡いただければ、変更・キャンセルとも承ります(お電話・LINE・予約サイトのいずれでも)
・それ以降・当日:お席をご用意してお待ちしているため、キャンセル料として◯◯を頂戴しています
・ご連絡なしの不参加:次回のご予約時にご相談させてください
>
体調不良や急なご事情の場合は、遠慮なくおっしゃってください。無理をして来ていただく必要はありません。
2. LINEや予約確認メッセージに添える版(短く)
ご予約ありがとうございます。◯月◯日◯時にお待ちしています。
>
ご都合が変わりましたら、前日18時までにこのトークからお知らせください。それ以降は枠を空けられないため、キャンセル料をお願いしています。体調がすぐれないときは、無理なさらずご連絡ください。
3. 店内に貼る版(いちばん短く)
ご予約の変更は前日18時までにお願いしています。
当日のキャンセルは、お席をご用意しているため◯◯を頂戴しています。
体調不良の場合はご相談ください。
3本に共通しているのは、最後に「体調不良は相談してください」と書いてあることです。この1行があると、ポリシー全体が取り立ての通告から、お互いのための取り決めに見えてきます。実際、無理して来店されるほうが店にとっても困ります。
金額の「◯◯」は、いくらにすればいいんですか?
そこはこの記事では決められません。業種と契約の形で変わりますし、法律の線もあります。次の節に判断の材料を書きました
03金額を決める前に知っておくこと
ここは慎重に書きます。キャンセル料の金額は、好きに決められるわけではありません。
消費者契約法第9条第1項は、解除に伴う違約金のうち「平均的な損害の額」を超える部分を無効としています。平均的な損害とは、そのキャンセルによって実際に店が失った額のことです。1万円の施術を当日キャンセルされて1万円全額を請求できるかは、その枠が本当に埋まらなかったのか、材料費など変動費が浮いていないか、といった実態によります。
つまり、「当日100%」と書いてあっても、争いになれば全額が認められるとは限りません。逆に、実態に見合った額であれば根拠として説明できます。
そして、請求するには前提があります。予約の時点で条件を伝えていて、相手がそれを了承していることです。当日になってから「実はキャンセル料があります」は通りません。だから、ポリシーは予約導線の中に置く必要があります。
金額の妥当性、事前告知のやり方、回数券やコース契約が絡む場合の扱い(特定商取引法が関わることがあります)は、契約の話です。この記事も、AIも、その判断はできません。行政書士・弁護士など契約を扱う専門家に確認してください。ここに書いたのは、その手前の「前提を揃える文面」の作り方です。
現実的には、多くの個人店は「書いてあるが、実際にはほとんど請求しない」という運用をしています。それでも意味があります。書いてあるだけで連絡率が上がるからです。請求するかどうかは、そのつど判断すれば足ります。
04どこに置くか(4か所)
文面を作っても、読まれる場所になければ効きません。予約が成立するまでの導線に置くのが原則です。
| 置き場所 | 何を置くか | 効き方 |
|---|---|---|
| 予約ページ・HP | 標準版(文例1) | 予約前に読まれる。了承の前提になる |
| 予約確認のメッセージ | 短縮版(文例2) | いちばん読まれる。予約直後は関心が高い |
| 前日のリマインド | 変更方法だけ再掲 | 「今なら間に合う」を伝える |
| 店内 | 掲示版(文例3) | 次回予約のときに目に入る |
このうちいちばん効くのは予約確認のメッセージです。予約した直後は、その予定への関心がもっとも高い瞬間だからです。ホームページの奥に置いてあるポリシーは、まず読まれません。
ホットペッパーなどの掲載媒体を使っている場合は、媒体側のキャンセルポリシー欄も埋めてください。空欄のままの店が多く、そこを埋めるだけで前提が伝わります。
05書いたあとに変わること
ポリシーを置くと、キャンセルがゼロになるわけではありません。変わるのは内訳です。
無断の不参加が減って、事前連絡が増えます。これが実利です。前日までに連絡が来れば、枠を他の方に案内できます。当日朝の連絡でも、掃除や仕込みの段取りは変えられます。何も言われないまま時間が過ぎるのが、いちばん損が大きい。
だから、ポリシーを作ったあとに見る数字はキャンセル件数そのものではありません。「連絡があったキャンセルの割合」を見てください。ここが上がっていれば効いています。
06今日やる1つ
予約確認のメッセージに、文例2を貼ってください。5分で終わります。
予約ページの整備は後でかまいません。まず、次に予約が入ったときの返信に1行足す。それだけで、次のキャンセルの連絡率が変わります。
07よくある質問
常連さんにも同じポリシーを適用するんですか?
文面は全員に同じものを出しておいて、運用で判断するのが現実的です。相手によって書いてあることを変えると、あとで説明がつかなくなります。「書いてあるけど、今回はいいですよ」は言えますが、「書いていないけど今回は頂きます」は言えません。
キャンセル料を請求したら、その人はもう来ないのでは?
その可能性はあります。ただ、当日キャンセルを繰り返す人が来なくなることは、店にとって損とは限りません。判断材料は、その枠が埋まる店かどうかです。埋まらない店なら、関係を維持するほうが優先です。
「当日100%」と書いている店をよく見ます。
書くこと自体は自由です。ただ、争いになったときに全額が認められるかは別です(消費者契約法9条1項)。実態に見合わない額を掲げるより、根拠を説明できる額のほうが結果的に強いです。
予約時に「同意します」のチェックは必要ですか?
ネット予約なら、あるほうが確実です。了承を得た記録が残る形が望ましいという考え方です。電話予約なら、口頭で「前日18時までのご連絡でお願いしています」と伝えるだけでも、伝えた事実は作れます。
飲食店でもポリシーは必要ですか?
コース料理や個室、大人数の予約があるなら必要です。仕入れが発生する予約は、キャンセルの損害がはっきりしています。当日ふらっと来る客が中心の店なら、優先度は下がります。
出典: 消費者契約法第9条第1項(解除に伴う損害賠償額の予定等の制限)。文面と運用の考え方は当研究室で作成したもので、キャンセル料の可否・金額の妥当性を判断するものではありません。
ポリシー文をお店の言葉に直すAIへの頼み方・置き場所別の長さ調整・予約確認メッセージへの組み込み方は、note「小さなお店のAI研究室」で1本300円で順次公開します。公開され次第、ここにリンクを載せます。アカウントを見る


