常連が来なくなった理由。1位は不満ではありませんでした
常連さんが来なくなったことに気づいたとき、最初に浮かぶのは「何か気に障ることをしたかな」だと思います。先に調査の数字を言います。美容室に行くのをやめた理由の1位は「引っ越しや生活の変化」(男性33%・女性27%)で、技術や接客への明確な不満は、どの項目も2割以下でした(楽天インサイト・2018年・約1万2千人)。来なくなった理由の最大勢力は、あなたの店への不満ではありません。この記事では、この調査の中身と、原因を3つに仕分ける考え方、そして「不満なく離れた人」に思い出してもらう1通の書き方まで、順に書きます。
常連さんが、1人また1人と来なくなってる気がする。はっきり文句を言われた覚えはないし、心当たりもなくて、それが余計に怖い
その「心当たりがない」は、たぶん正しい感覚です。1万2千人の調査では、やめた理由の1位はお店への不満ではありませんでした。数字から見ていきます
01「やめた理由」を1万2千人に聞いた調査があります
厚生労働省が出している美容業向けのマニュアルに、楽天インサイトが2018年に実施した消費者調査が載っています(回答12,687人・うち美容室を主に使う人7,306人)。「通っていたお店に行くのをやめた理由」の上位はこうでした。
| やめた理由 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 引っ越しや生活の変化で行けなくなった | 33% | 27% |
| 担当者の技術や提案がよくなかった | 14% | 20% |
| 担当者が辞めた | 18% | 19% |
| スタッフや客層の雰囲気が合わなかった | 10% | 14% |
| 接客態度・身だしなみがよくなかった | 4% | 7% |
1位は引っ越しや生活の変化。明確な不満は、どの項目も2割以下です。
ひとつ補足があります。検索で上位に出る記事には「失客の1位は、なんとなく」と書かれたものが複数あって、正直、調べる前はうちもそれを信じかけていました。出典をたどると同じ調査に行き着くのですが、原典を確認したところ、「なんとなく」という選択肢はそもそも存在しませんでした。1位はあくまで「引っ越しや生活の変化」です。ただし選択肢に「特に理由はない」系が無い設計なので、なんとなく離れた人がいないという証明にもなりません。孫引きの数字はこういうずれ方をするので、この記事は原典で確認できた数字だけで書きます。
02嫌いになっていないのに、来なくなる
不満がないのに離れるとき、お客さんの側では、だいたいこういうことが起きています。
- 施術には満足した。また行こうと思っていた
- 仕事や家のことが忙しくなって、1ヶ月が過ぎた
- 3ヶ月経つと「今さら予約するのも気まずいかな」に変わる
- 半年経つと、お店のことを思い出す機会そのものが無くなる
どこにも「嫌いになった瞬間」がありません。関係が切れたのではなく、接点が切れただけです。そして接点が切れている間、お客さんは何もしていないわけでもありません。サロンを変えた経験のある人の27.7%は、来店する前——ネットで調べ直したり口コミを見たりする段階で、変更を決めていたという調査があります(リクルート ホットペッパービューティーアカデミー・2023年・女性300人)。久しぶりに「そろそろ行こうかな」と思った人が、ページを見て、返信のない低評価の口コミを見て、静かに別の店を選ぶ。ここも失客の現場です。低評価の口コミへの返信の書き方を整えておくのは、新規のお客さん向けだけの仕事ではありません。
03原因が違えば、打ち手も違います
離れた原因を3つに仕分けると、それぞれ打ち手が変わります。
| 離れた原因 | 割合の目安 | 打ち手 |
|---|---|---|
| 引っ越し・生活の変化 | 最大勢力(男33%・女27%) | 追わない。声をかけても戻れない事情です |
| 明確な不満(技術・接客・雰囲気) | 各項目2割以下 | 原因を直す。声かけだけでは戻りません |
| 不満のない離脱(忙しさ・気まずさ) | 選択肢に無く割合は不明 | 思い出してもらう。1通で戻る可能性があり、費用0円 |
大事なのはこの仕分けです。「常連が減った、何かしなきゃ」と焦ると、打ち手は全員向けの割引や一斉DMになりがちです。でも1行目の人には届かず、2行目の人には逆効果で、効くのは3行目の人だけ。声かけの対象は「不満なく、なんとなく離れた人」に絞ります。直すものが何もないので、思い出してもらうだけでいい。個人店に打てる手の中で、いちばん近くにあって、いちばん安い場所です。
何人が、どのくらいの期間で離れているのか。自分の店の数字で確かめたいときは、リピート率を2段に分けて測る方法で数えられます。
追わない(生活の変化)・直す(明確な不満)・思い出してもらう(不満のない離脱)。この3つは、混ぜると全部外します。メッセージが効くのは3つ目だけで、調査の上では「不満以外」が最大勢力です。
04思い出してもらう1通は、順番で決まります
書く内容は3つ、順番もこのままにします。
- 気にかけの一言(思い出してもらう。近況を気づかう)
- 役に立つひとこと(いまの季節の悩みへの短いアドバイス)
- 軽い案内(空き状況にひとこと触れる程度)
やってしまいがちなのは、①②を飛ばして「お久しぶりです!今なら20%OFFです!」と③から入ることです。受け取った側の感想は「あ、営業だ」で終わります。いちばん戻ってきてほしい「満足していたけど忘れていた人」ほど、この1通で静かに離れます。
3ヶ月ほど空いたお客さんへの文例を1本。
こんにちは。朝晩すこし涼しくなってきましたね。夏の紫外線の影響がこれから肌に出やすい時期なので、化粧水をいつもより少し多めにするだけでも違いますよ。今月は木曜の午後が比較的空いています。
案内は最後の1文だけ、全体の2割です。③まで読まれなくても、「覚えていてくれた」と思ってもらえた時点で、この1通の目的は達成しています。それと、割引は付けません。割引で戻った関係は割引で揺れますし、いま通っている店を続ける理由に「リピーター向け割引・クーポン」を挙げた人は6.3%という調査もあります(リクルート ホットペッパービューティーアカデミー・美容センサス2025年上期・女性5,226人)。
もうひとつ、離れていた期間で文の距離感を変えます。
| 空いた期間 | 入り方 | 案内 | やりがちな失敗 |
|---|---|---|---|
| 3ヶ月 | 挨拶なしで季節の話から | 空き状況を1文 | 「ご無沙汰しております」で距離を作ってしまう |
| 6ヶ月 | 間があいたことに軽く触れる | 「機会があれば」程度 | 謝りすぎて「来ない自分が悪い」と思わせる |
| 1年以上 | 店の近況のお知らせとして | 書かない | 「お待ちしております」で営業に見える |
まずは3ヶ月の人だけで構いません。関係がまだ温かく、短い文で済み、台帳をめくれば人数もすぐ数えられるからです。3つの期間を同時にやろうとすると、経験上、1通も送れずに終わります。
05業種で変わるのは、気にかけの中身だけです
順番(気にかけ→役立ち→案内)は業種を選びません。変わるのは②に何を書くかです。
- サロン・治療院: 季節の肌・髪・体の変化にひとこと。「前回気にされていた◯◯」が書ければいちばん強いです
- 飲食店: 季節のメニューや仕入れの話。「◯◯のいい時期になりました」は、案内というより気にかけとして読まれます
- 教室・習いごと: 「続きはいつからでも再開できます」の一言。ブランクの気まずさを先に消すのが、この業種の役立ちです
共通して効くのは、相手が返信しなくても気まずくならない終わり方にすることです。返事を求める文は、それだけで重くなります。
06今日やる1つ
予約台帳の3〜4ヶ月前のページを開いて、そのあと予約が入っていない方の名前を10人書き出してください。文はまだ書かなくて大丈夫です。先に名前が出ていれば、次に時間ができたとき、すぐ1通目に取りかかれます。文から作り始めると、「で、誰に送ろう」のところで止まります。
07よくある質問
来なくなった理由を、本人に聞いてもいいですか?
勧めません。「どうして来られなくなったんですか」は、こちらにその気がなくても、責める形に読まれます。理由の内訳は調査の数字で十分です。送る1通は、理由を聞かず、返信も求めず、気にかけだけにしてください。
割引を付けたほうが戻ってきやすくないですか?
最初の1通には付けないことを勧めます。「離れると割引が来る」と学習した方は次も待ちますし、価格で戻った関係は価格で揺れます。割引は、割引なしの文で反応がなかったときに考える、最後の手札です。
送っても反応がありません。何回まで送っていいですか?
同じ方には月1回まで、反応がなければ3回で止める。これがこの記事の目安です。反応がないのは普通のことで、失敗でもありません。3回で動かない方は「追わない」の側に仕分けて、その時間を次の10人に回してください。
この記事の完全版(3ヶ月・6ヶ月・1年以上の期間別にメッセージを作るAIへの頼み方の全文と実演・送信前チェックリスト11項目・返信が来たときの5パターン別の返し方)は、noteの記事と月額の研究室で公開予定です。公開され次第、ここにリンクを載せます。
出典: 美容室に行くのをやめた理由=厚生労働省「生活衛生関係営業の生産性向上を図るためのマニュアル(美容業編)」(2019年発行)掲載の楽天インサイト調査(2018年12月・回答12,687人・美容室主利用7,306人。当研究室が2026年8月29日に原典PDFを確認)/来店前のサロン変更27.7%=(株)リクルート ホットペッパービューティーアカデミー 顧客満足調査MOT(2023年9月・20〜59歳女性300人)/継続理由のリピーター向け割引6.3%=同 美容センサス2025年上期・美容室編(女性5,226人)
手順の詳しい版・コピペで使えるAIへの頼み方・実測データは、noteの記事(300円)と月額の研究室で公開予定です。公開され次第、ここにリンクを載せます。
